外傷・傷跡・やけどInjury

外傷とは

外傷とは、いわゆる「怪我」のことを指す医学的用語です。
形成外科では、主に顔、手足の骨、筋肉や腱、神経や血管などに生じた外傷の機能を回復するとともに、見た目の回復も配慮した治療を行います。
外傷の中でも最も一般的なものは、創傷とよばれる皮膚や軟部組織の外力による損傷です。
創傷には、切創(切り傷)、擦過傷(擦り傷)、裂挫創(裂けた傷)、咬傷(咬み傷)などがあり、状態により治療方法が異なってきます。

切創(せっそう:切り傷)

切創は、包丁やカミソリなどの刃物、金属の端、ガラスの欠片など、薄く鋭利なものが皮膚と接することでできた、いわゆる切り傷のことです。
手足は、比較的浅い場所に血管や神経、筋肉や腱などが通っていますので、切創によってそれらが損傷を受けることが多く、できるだけ早い内に内部組織も含めた処置が必要になります。
また、顔面には、皮下に表情を作る顔面神経、唾液が流れる耳下腺管、涙を鼻に排出する涙小管など、日常的に重要な器官があり、外見上も目立つため、形成外科による高度な治療が必要となるケースもあります。
切創は皮下の血管も傷つけることが多く、出血が多いことも特徴の一つで、早めに止血のための処置を行う必要があります。
切創は、一般的に単純な損傷であるケースが多く、縫合などの適切治療を行うことで、個人差はありますが1週間程度で軽癒していくことが多い傷です。

擦過傷(さっかしょう:擦り傷)

ころんだり、屏などにぶつかったりして皮膚の表面が剥けた状態になった、いわゆる擦り傷です。比較的傷は浅く、損傷が深部まで及ばないことが多いため、傷部を清潔に保ち保護することで、比較的早いうちに治ります。
ただし、道路や砂地などで転んで擦過傷ができたときに、真皮の部分までアスファルト粉や砂など、色のあるものが入りこんで取り切れないまま表皮が治ってしまうと、皮下の異物の色素が目立って、外傷性刺青という状態になってしまいます。そのため、擦過傷を受けた際には、できるだけ早めに傷の部分をしっかりと洗浄し、ブラッシングなどで異物を取り除いておく必要があります。
もし、外傷性刺青がおこってしまった時には、レーザー照射や外科的に切除などによって治療します。

裂挫創(れつざそう:皮膚が裂けた傷)

自転車とぶつかったり、木の枝のようなものに当たったりなど、外部から鈍的な強い刺激を受けてできる創傷で、開放的な傷口をもち出血をともなうものが裂挫創です。傷口は複雑で損傷が高度なことが多く、また屋外で受傷したときには、患部に細菌などが入り込んでいる可能性が高く、治療後に感染症などを起こしてしまうこともあります。そのため、傷口は十分に洗浄し、抗菌薬の内服などで感染予防を行う必要があります。
傷口が複雑なケースでは、周辺の組織を一部切除するデブリドマンを行った後に縫合しなければならないようなケースもあり、治癒まで比較的時間がかかる傷です。

刺創(しそう:刺し傷)

包丁やナイフ、釘や針など、先端の尖った鋭利な器具が皮膚に刺さることでできるのが刺創で、一般的には刺し傷と言います。
傷口は小さめですが、皮膚の深部まで至っていることが多く、血管や神経なども損傷を受け、さらには臓器にまで至ることもあります。
原因となった器物の破片などが体内に残存していないかを確認するとともに、損傷を受けた内部組織の早急な修復が必要です。

咬傷(こうしょう:咬み傷)

いわゆる咬み傷は、咬まれたことによっておこります。動物の場合、イヌやネコなどの哺乳類や爬虫類によるものが多く、手足や顔などに多く発生します。人による咬み傷は、喧嘩などで起こることが多いのですが、時に性器などに発生することもあります。
咬傷は、咬んだ歯の形と一致する傷が特徴です。傷口としては、小さく、それほど深くないことが多いのですが、人や動物の口腔細菌が傷内に入り込み、感染症を起こしてしまう可能性が高く、治療としても感染予防を重点的に考え、傷口の洗浄や抗菌薬の投与などのほか、破傷風の予防注射などを行います。
また、咬傷は、傷痕は小さいのですが、歯形として特徴的に傷が遺ることがあり、できるだけ傷痕を目立たないように治療することもポイントの一つです。
また、歯形が空洞のまま縫合してしまうと、内部に膿が溜まってしまうことがありますので、縫合せずに傷痕を開放したまま、外部からの感染に注意しつつ治療します。

やけどとは

火傷とは、熱や電気、電磁波などの高周波、化学薬品などによって起こる皮膚の外傷の一つで、医学的には熱傷と言います。
火傷の程度は、熱源(または化学薬品や電磁波などの刺激物)と皮膚が接触していた時間や温度によって起こります。
しかし、通常は高温による火傷が重症となると思われがちですが、45℃から50℃程度の熱に長時間当たっていることで起こる、低温熱傷は、時間をかけてじわじわと進行するため、一般的に深く重症の火傷になりやすいことが知られています。低温熱傷の原因としては、湯たんぽやカイロ、電気毛布やホットカーペットなどがあります。
火傷の重症度はⅠ~Ⅲ度の3段階にわけて考えます。

火傷の重症度

I度

熱に触れた部分の皮膚が赤くなり、浮腫が生じ、痛みを感じますが、障害は皮膚表面だけにと止まります。一般的に数日で跡を遺さず消えてしまいます。

II度

熱による障害が真皮まで届き、水ぶくれ(水疱)ができます。Ⅱ度熱傷は障害が到達する深度によって「浅達性」と「深達性」とわけて考えます。

浅達性II度熱傷

真皮の中層まで達している場合、浅達性Ⅱ度熱傷に分類します。障害の深度が真皮中層であれば、毛根や汗腺、皮脂腺などに障害は及びません。また知覚神経にも障害が及ばないため、強い疼痛があるのが特徴です。真皮まで到達していますので、治癒には1~2週間程度と少し時間がかかります。一般的には火傷跡も残りません。

深達性II度熱傷

真皮下層まで熱による障害が到達してしまった状態です。毛根、汗腺、皮脂腺などの他、知覚神経にも障害がおこりますので、浅達性の場合より痛みは一般的に鈍くなります。
また皮下組織の破壊により瘢痕が残ることが多くなります。

Ⅲ度

皮膚の全層に損傷を受けるばかりでなく、時に皮下組織まで損傷が及びます。患部表面はじくじくしたり、水疱ができたりすることもなく、乾燥し、硬くなります。また高熱であった場合には炭化することもあります。知覚神経が破壊されてしまうため、痛みはありません。
治癒には1か月以上の時間がかかり、瘢痕が残ります。

火傷の治療

応急処置

まずは、患部を冷やすことが大切です。できれば流水で30分は冷やすのが一番ですが、場所的に無理な場合は冷やしタオル、氷嚢などでもよいので、とにかく冷やすことによって痛みも和らぎます。
もし着衣の上から火傷を負ったような場合、無理に衣服を脱がそうとすると皮膚が剥がれてしまうことがありますので、着衣のまま冷やすようにしてください。

受診後の治療

火傷は程度によって治療法が異なってきます。Ⅰ度程度であれば、ほとんど治療の必要はなくご自身で軟膏などを塗布する程度でよいでしょう。また、Ⅱ度の火傷であれば、ほとんどの場合は、消炎作用のある軟膏の塗布、傷の治りを促進する薬や感染防止のために抗菌薬の内服などによる保存的療法を行います。
重症のⅢ度熱傷の場合は、状態によって皮膚移植などを行う必要がでてくる場合もありますので、基本的に入院の上、薬物療法とともに外科的治療も行います。
火傷の場合、上皮が再生してきても、まだ皮膚のまわりの組織が再生していないこともあり、痒みで皮膚を搔いてしまい再生した上皮が破れて悪化することもあります。自己判断で治療を中止せず、必ず医師の指示に従い完治まで治療を続けてください。

あざ

皮膚が部分的に変色して、他の場所と異なった色になっている状態を「あざ」といいます。転倒して膝を打ち付けてできたような変色をあざと言うことがありますが、医学的には、それらは一時的なもので、時間の経過で治っていくためあざとは言わず、皮膚の下にずっと消えない変色があるケースをあざと呼んでいます。
あざには生まれつきある先天性のものと、成長する過程や加齢によって出てくる後天性のものがあります。

あざの種類

あざの色は、変色の元がメラニン色素であるか、赤血球であるか、またメラニン色素の場合は、皮膚のどの程度の深さにあるかなどによっていくつかの種類にわけることができます。

黒あざ(色素性母斑等)

黒あざは、色素性母斑といっていわゆるほくろなどのことを指します。表皮と真皮の間、または真皮の浅い部分にある、メラニン色素をつくるメラノサイトが固まって存在し、それが透けて見えることによって濃い褐色または黒色に見えます。普通の大きさのほくろであれば、ほぼ良性の腫瘍で特に治療の必要はありません。
ただし、時に背中などに発症する巨大な黒あざ(巨大母斑)は悪性化する可能性があるといわれており、診察を受けることとお勧めしています。

青あざ(蒙古斑・太田母斑等)

通常メラノサイトは真皮内には存在しないのですが、稀に真皮内のやや深い部分にメラノサイトが存在することがあります。皮膚の深い部分にメラニン色素が沈着した場合、青色に見えるため、青あざと呼ばれます。
代表例としては、赤ちゃんに時々みられるお尻の蒙古斑、眼の周りや耳たぶなどに生後しばらくするとあらわれる太田母斑などがあります。また、お尻以外の場所に蒙古斑のようなものがあらわれる場合もあり、これは異所性蒙古斑といいます。

赤あざ(血管腫等)

赤あざは、血管が増殖したり、変形したりすることでできる良性の腫瘍で、医学的には血管腫と呼ばれます。
生まれたときから存在し、平坦で赤ワインのような色を呈する単純性血管腫や生まれてからしばらくすると急激に大きくなり、患部が盛り上がっていちごのように見えるイチゴ状血管腫など、乳幼児によくみられるものが一般的ですが、成長してから現れるものには、爪の下や指の腹に多発するグロムス腫瘍や加齢によって発症する老人性血管腫などがあります。

茶色あざ(扁平母斑・伊藤母斑等)

皮膚の浅いところに色素が沈着するため、茶色に見えるのが茶色あざです。ほくろのように皮膚が盛り上がることがなく平で茶色い扁平母斑が代表的なものです。多くの扁平母斑は生まれつきのものですが、成長後にできることものは、遅発性扁平母斑と呼ばれます。
また、伊藤母斑は見た目が太田母斑のような様相を呈しますが、できる部位が肩や肩甲骨周辺と、顔にできる太田母斑と異なります。
いずれも良性のもので、まず悪性化することはありません。

治療・アドバイス

治療・アドバイス

あざは自然に治癒することがないため、治療が必要な場合は、外科的に切除するか、レーザーなどを使用することになります。
近年では、レーザー技術が発達したため、以前は治せなかったようなあざの治療も可能となっています。ケースによっては保険が適用になることもありますので、お悩みがある場合はお気軽にご相談ください。

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